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関連年表

注 : ここに掲げた年表はケルトキリスト教会とローマ教会との関連をしめしただけの略年表である点をお断りしておきます。

ケルトキリスト教会 ローマカトリック教会 日本
AD371 修道制度がアレクサンドリアからレランス・トゥールへもたらされる

c.397 聖ニニアン、スコットランド南西部ギャロウェイ(現Whithorn)にカンディダ・カーサ修道院設立。ここから数多くのアイルランド人修道士が輩出される

401 パトリック、奴隷としてアイルランドへ売られる。7年後に脱出

461(伝統的には432) パトリック、司教としてアイルランド再訪

490 エンダ、アラン諸島イニッシュモアに修道士養成所を設立

「航海者」ブレンダン(484?-577)、クロンファート修道院(554)

530? フィニアン(549ごろ没)、クロナード修道院設立

545? キアラン(512/516-545/549)、クロンマクノイズに修道院を設立

558 コムガル(517-603)、バンゴール修道院設立

コルンバ、デリー(546)、ダロウ(556)に修道院を設立
563 コルンバ、アイオナ島に共同体設立

565? ブレンダン、アイオナ島でコルンバと会見

591 コルンバヌス、ヨーロッパ大陸へ渡り伝道を開始

635 エイダーン(?-651)、スコットランドのリンディスファーン島にケルト修道院設立
650 『ダロウの書』制作
650-750 石造ハイクロス建造盛んになる
698? イードフリース『リンディスファーン福音書』制作
750-800 コルンバを記念して『ケルズの書』制作

780以前 『聖ブレンダン伝』祖形成立?
780-800 『聖ブレンダンの航海』祖形成立?

8-9世紀、ケーリ・デ(神の僕)教会刷新運動、『ストウのミサ典礼書』の制作

793-95 ノースメン来寇、リンディスファーン修道院襲撃(793)

837 ノースメンの大船団がボフィー、リフィー両河に出現
840 ノースメン、アーマー襲撃

1169 アングロ・ノルマン軍侵入
1188 ギラルドゥス・カンブレンシス 『アイルランド地誌』
AD313 東ローマ帝国皇帝コンスタンティヌス、キリスト教を公認(ミラノ勅令)

325 ニケア公会議、アタナシオス派を正統(カトリック)とし、司教アレイオスを断罪。「ニケア原信経」採択

375-401 西ゴート族移動、ゲルマン民族大移動開始

ヨハネス・カッシアヌス(360-435)

476 西ローマ帝国滅亡

カッシオドルス(490?-585?)

539 ヌルシアのベネディクトゥス(480-547)による「ベネディクトゥスの修道会則」。以後西方教会における修道会則の規範となる

597 ローマ教皇大グレゴリウス1世、アウグスティヌスをケントへ派遣

601 アウグスティヌス(?-604)、カンタベリー初代大司教叙任

605-664 復活祭・剃髪型論争、ウィットビー大修道院にてローマ方式が採用される

610 コルンバヌス、ガリア追放

612 コルンバヌス、ロンバルディア到着、ボッビオに修道院設立(615年没)

尊者聖ベーダ(672/3-735)『イングランド教会史』(c.731完成)

697 アイルランド教会、バーの宗教会議でローマ方式の教会暦を正式採用、アイオナ共同体のみケルト方式を支持、孤立する(〜712)  




800 カール大帝戴冠、西ローマ帝国再興(カロリング・ルネッサンス)

ヨハネス・スコトゥス・エリウゲナ(810-877?)、『自然の区分』(862-66)

825 ディクイル、『地球の計測』

c.890 ウェセックス国アルフレッド大王(在位871〜899)、『アングロサクソン年代記』(〜1154年)編纂開始


911 ノルマンディー公国成立


962 オットー1世戴冠、神聖ローマ帝国成立


1054  東西キリスト教会大分裂(Great Schism)
1066 ノルマン人、イングランドを征服

1096-99  第1回十字軍
c.AD350 大和朝廷の成立

538 百済から仏教伝来

592 推古天皇即位

604 聖徳太子、17条憲法発布

607 法隆寺造営

645 大化の改新

667 近江大津宮遷都

694 藤原京遷都
c.694-710 高松塚古墳・キトラ古墳
710 平城京遷都
712 『古事記』編纂
720 『日本書紀』編纂

752 東大寺建立、大仏開眼

781 『続日本紀』、富士山噴火の最古の記録

794 平安京遷都


816 空海、金剛峰寺創建
841 『日本後記』編纂 864-66 富士山貞観の噴火。本栖湖・精進湖・西湖の形成

894 遣唐使停止

901 菅原道真、大宰府配流
905 『古今和歌集』編纂
935-41 承平・天慶の乱 c.935 『土佐日記』
937 『日本紀略』、承平7年の富士山噴火記録

c.1001-1016 清少納言『枕草子』、紫式部『源氏物語』

1059 菅原孝標女『更級日記』
1083 富士山、永保3年の噴火
c.1131 『大鏡』編纂 1156  保元の乱
1159  平治の乱、源頼朝伊豆へ配流

1185 壇ノ浦の戦い。安徳天皇入水。平氏の滅亡

1190 西行没(1118-)
1192  源頼朝、鎌倉幕府を開く








1205  『新古今和歌集』編纂
1212  鴨長明『方丈記』


WWWブレンダンリンク集

hyperlinks

  ラテン語版『航海』Navigatio に代表される聖ブレンダンの伝説に触発されたのは、コロンブスやティム・セヴェリンのような冒険家だけではありません。多くの芸術家の心をも捉えてきました。たとえばかの『指輪物語』で有名なトールキンもこの『航海』に取材した詩を残していますし(1937年頃、くわしくは参考文献項をご覧ください)、マシュー・アーノルドも「聖ブランダン」という詩を残しています(Saint Brandan, 1860, in The Poems of Matthew Arnold, Longmans, London, 1965, pp. 463-66)。米国では聖ブレンダンを皮肉った、『聖ブレンダンの生と死と愛』なる映画が製作され(1946)、ティム・セヴェリンによる再現航海の著作に触発された作曲家が『ブレンダン号の航海』という組曲を発表したり(1980)、最近ではジェフ・ジョンソンという若手音楽家が『聖ブレンダンの祈り』というアルバムを発表しています(1998)。まだ聴いたことはありませんが、アイルランドの人気グループ Iona のレパートリーにも聖ブレンダンを題材にした歌があり、またハープギター奏者ジョン・ドーンにも同様の曲があります。イタリアの画家ダニエル・デ・アンジェリは1993年、ラテン語版『航海』に触発されて描いた水彩画の連作を発表、欧州各国を巡回して展覧会を開き、その後この連作集はラテン語版の英訳者J.J. オメイラ教授の英訳とともに大判の絵本として出版されました。また米国の女流作家ジーン・フリッツも、おもに『聖ブレンダン伝』に取材した、子供向け読み物を書いています↓。

  子ども向け読み物としてはこのほかにも二点あります。ティム・セヴェリンのカラフ復元船による実験航海に取材した'Turas a Bhreandain(アイルランドゲール語)'と、2005年刊行のSaint Brendan And The Voyage Before Columbus'があります(参考文献欄参照)。

 このように聖ブレンダンの航海物語に接する現代読者もまた、聖ブレンダンの物語に触発され、新たな物語を生み出しつづけているのです。以上のことがらは、この物語がキリスト教色の濃い作品だということにとどまらず、人間の内面への探求といった、普遍的なテーマを追求した作品であることを強く認識させてくれます(☆印は新しく追加したリンクです)。

 組曲『ブレンダン号の航海』についてはこちらです。

 ジェフ・ジョンソンのアルバムについてはこちらをご覧ください。

 ハープギター奏者ジョン・ドーン本人のサイトはこちらです。

 聖ブレンダンゆかりのクロンファート聖堂跡のページ

 ケルト教会や中世アイルランド史に関する広範な研究書を出版しているダブリンのFour Courts Press 社のサイト(リンクはSeafaring Saintのページです)。

 オランダ・ユトレヒト大学中世史学サイトにある聖マロ伝のページです

 中世アイルランド・ケルトキリスト教会修道院制の発達を考察したサイトです(英語)

 聖ブレンダン横断リンク集のページ(英語)。

☆アダムナンの『聖コルンバ伝』を軸に、ケルトキリスト教修道院時代のアイルランド特有の「贖罪巡礼」を考察したサイト。ほかにも世界遺産指定遺跡スケリグ・マイケルをはじめ、貴重な旅の写真も楽しめるサイトです。→Ria's page Exile

ディングル半島観光局サイト

アイルランド観光局サイト

☆「聖コルムキレ」号プロジェクトのサイト。1994年に北アイルランド・アントリム州ポートラッシュに設立されたCauseway Coast Maritime Heritage Group (CCMHG)が、聖コルンバ没後1400年に当たる1997年に聖人を偲ぶ航海をおこなうために、当時に近いかたちで革舟を復元し(ただし船体はタールを塗ったカンヴァスを三重に張ったもの)、聖人の航海を再現するプロジェクトとして発足。その後CCMHGはこのレプリカ船で2000-01年に北フランスとスペインのバスク沿岸部を訪問、また2003年には北アイルランドとアイルランド共和国との平和共存を訴えるアイルランド島一周航海もおこないました(同団体のシンボルは、ディングル半島バントリーに現存する6世紀ごろのカラフの浮き彫りです)。

☆イタリア語訳『聖ブレンダンの航海』サイト。標準イタリア語訳版のほか、トスカーナ・ヴェネチア方言語訳版も併記。底本にしているのはオランダ・ユトレヒト大学公開の「アランソン写本」。

☆Heritage Irelandサイト。聖ブレンダンが創建したアードファート修道院跡も掲載。

古代マンスター地域を支配していた各王族について詳述したサイト。

☆ネイ湖ボーティングヘリテッジ協会 Lough Neagh Boating Heritage Associationの'naomhóg'のページ。同協会は北アイルランドのネイ湖で活躍してきた伝統漁船やその文化遺産の維持継承を目的として設立されたNPO団体。ケリー州のカラフもくわしく紹介している。

  最近、こんな動画も見つけました。子ども向けにリメイクされた『聖ブレンダン伝』です。ところどころあらたに追加されたエピソードなどもありますが、ひじょうに巧みに再構成されており、いわば最新のスピン・オフのひとつと言ってよいでしょう。

  ☆スコットランド在住のKiyoiさんによる、ヘブリディーズ諸島のアイオナ島訪問記(「Newhouse通信」サイト)。天気のよい日には、「フィンガルの洞窟」で有名なスタッファ島も望めるみたいです。

  コルンバヌスの後継者ボッビオのジョナスによる『聖コルンバヌス伝』オンライン版。

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参考文献

(☆印は新しく追加した本)

further reading



ラテン語版『航海』校訂版と現代語訳について
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☆太古隆治訳「聖ブレンダンの航海(1)」(セルマー校訂原典からの初邦訳、訳者による解題と注)、『広島大学フランス文学研究』22号、pp. 62-83., 広島大学フランス文学研究会、2003. なおchp12. 以降は今年後半刊行の同23号(pp. 48-71, 2004)に掲載。 カール・セルマー校訂ラテン語版『航海』の初の邦訳。「正確さ」という点でオメイラその他英訳より勝っています。一般書籍として刊行されないことが残念です…。
☆Giovanni Orlandi ed., Navigatio Sancti Brendani, Edizione del Galluzzo, Firenze, 2003. 現在はイタリア語版のみ。いまだ未入手。
Carl Selmer ed., Navigatio Sancti Brendani Abbatis from Early Latin Manuscripts, 1959 ; repr. Four Courts Press, Dublin, 1989. ラテン語版『航海』全写本の系譜から、もっとも「原型」をとどめていると思われる写本18をつき合わせて編纂・校訂したはじめての労作。くわしくはこちら
Carl Schröder, Sanct Brandan : ein lateinischer und drei deutsche Texte, Besold, Erlangen, 1871. モラン編纂ラテン語版『航海』刊行後、カール・シュレーターが独自に選んだ写本から編んだラテン語版『航海』およびドイツ民衆本版『航海』を収録した本。
☆Patrick F. Cardinal Moran, Acta Sancti Brendani : Original Latin Documents connected with the Life of Saint Brendan, Patron of Kerry and Clonfert, Kelly. Dublin 1872. ジュビナル編纂ラテン語版『航海』の再録および、ローマ/パリで発見された短縮版『航海』写本を収録。
(‘Legenda in festo sancti Brendani’)


書評・現代語訳・研究書など
Descriptions My comments
☆Gearo'id O' Donnchadha, St Brendan of Kerry, the Navigator: his life and voyages, Open Air at Four Courts Press, Dublin, 2004.
 聖ブレンダン研究書の最新刊。ラテン語版『航海』やゲール語版『聖ブレンダン伝』などを中心に、現在ではほとんど忘れ去られているアイルランド聖人についても解説。著者はケリー州フェニト教区の司祭。聖ブレンダン入門書としても最適。
David Dumville, ‘Two Approaches to the Dating of Navigatio Sancti Brendani’, Studi Medievali, 3rd ser, 29, 1988.  中世史家ダンヴィルによるセルマー校訂ラテン語版『航海』成立時期についての考察。7世紀アイルランド南西部における年代記の記録と『航海』冒頭部オーガナハト王族の言及の関連から、ラテン語版の原型が8世紀後半には成立していたと主張。
James Carney, ‘Review : Selmer, Navigatio Sancti Brendani’, Medium Aevum, 32, 1963.  セルマー校訂ラテン語版『航海』の書評。いくつか散見されるセルマーの「恣意的な」解釈と冒頭部の誤読を指摘。
☆Denis O'Donoghue, Brendaniana : St Brendan the voyager in Story and Legend, Dublin 1893 ; repr. by Lives and Legends of Saint Brendan the Voyager, Llanerch Publishers, Felinfach, 1994.  聖ブレンダンの「霊的子孫」であるアイルランド・ケリー州の小教区司祭による「聖ブレンダン伝説集」。モラン枢機卿編纂『航海』をはじめて英訳。現在、一部割愛した復刻版が入手可能。現地在住者として豊富な地理知識を活用した独自の考察は現在でも一読の価値あり。
Trans. by John J. O'Meara, The Voyage of Saint Brendan, Journey to the Promised Land, 1976 ; repr. Colin Smythe, Gerrards Cross, 1991, 1999.  セルマー校訂ラテン語版『航海』英訳本の「決定版」とされるもの。訳者オメイラ教授はかつてのウェッブ版に散見される欠陥をあらため、なおかつカーニーのセルマー版にたいする批判も盛りこんだと「序文」に書きましたが、10章では誤植(?, どう考えても「魚」であるpiscesがなぜかfleshと訳されている)ないしはうっかり(?)訳し忘れた箇所(第13章の聖ブレンダンの科白、「魚を必要なだけ取り、火で焼いて食べなさい」)あり。なおオメイラ教授英訳版では、冒頭に登場する「歓喜の島」と第28章で登場する島とはべつものとするカーニーの見解は採用していません。長年版を重ねつづけている、文字通りのロングセラー。
Trans. by J.F. Webb, Lives of the Saints, Penguin Books, Harmondsworth, 1965 ; repr. by The Age of Bede, 1983 ; rev. edn. 1998.  オメイラ版刊行まで、セルマー校訂ラテン語版『航海』唯一の英訳版だった本。しばらく絶版でしたが現在では、D.H. ファーマーによる作者不詳聖人伝の新訳と新序文が追加された増補改訂版としてペンギンクラシックスから復刊。『航海』以外ではベーダの『聖カスバート伝』など4編を収録。なお『聖ウィルフリッド伝』に664年のウィットビー宗教会議の記述あり(p.116-8)。
☆Oliver Davies, Thomas O'Loughlin, Celtic Spirituality, Paulist Press, New York & Mahwah, NJ, 1999.  編纂者によるセルマー校訂ラテン語版『航海』の英訳(pp. 155-190, 註はpp. 507-509.)。オメイラ英訳版を参照したとあるが、ウェッブ訳の表現がほぼそのまま使われていたりします。
Ian Short, Brian Merrilees ed., The Anglo-Norman Voyage of Saint Brendan, Manchester University Press, Manchester, 1979.   ベネディクト会修道士ブノワによる12世紀アングロ・ノルマン語版『航海』校訂編纂本。
Clara Strijbosch, The Seafaring Saint: Sources and Analogues of the Twelfth-Century Voyage of Saint Brendan  オランダ・ユトレヒト大学音楽学・ドイツ文学史研究者の著者渾身の力作。『聖ブレンダン伝』およびラテン語版『航海』、『メルドゥーンの航海』など、広範な中世アイルランドの写本群の系譜から、中世オランダ語版『航海』が12世紀初頭に成立したと主張する。もとは博士論文。1995年にオランダ語で刊行され、本書は著者自身による増補改訂版としてあらたに上梓された英語版。
Glyn S. Burgess, Clara Strijbosch, The Legend of St Brendan : A Critical Bibliography, The Royal Irish Academy, Dublin, 2000.  気鋭の中世ドイツ文学者のオランダ人女史と、英国・リヴァプール大学仏文学科教授による、聖ブレンダンにかんする全文献の「批評的」書誌。ほぼすべての聖ブレンダンにまつわる古今の文献が収録され、なおかつ著者自身のかんたんなコメントまで付されているという、至れり尽くせりの「聖ブレンダン本読書案内」。
Jonathan M. Wooding ed., The Otherworld Voyage in Early Irish Literature : An Anthology of Criticism, Four Courts Press, Dublin, 2000.  中世アイルランドにおけるキリスト教修道院文学にかんする論文のうち、とくに「航海物語」に的を絞って編纂したアンソロジー。カーニーやダンヴィルなど、ラテン語版『航海』にかんする考察も多数含まれています。→版元サイトへ
W.R.J Barron and Glyn S. Burgess ed., The Voyage of Saint Brendan: Representative Versions of the Legend in English Translation, University of Exeter Press, Exeter, 2002.  セルマー校訂ラテン語版『航海』のオメイラ英訳をはじめ、ブノア編アングロ・ノルマン語版、中世オランダ語・ドイツ語版、オック語版、イタリア語(ヴェネチア方言)版、カタロニア語版、古期英語(南イングランド方言)版、カクストンによる最古の英語印刷本版など、中世以降、西欧各国に流布したおびただしい写本群から代表的なものを選んで、それぞれに英語対訳を添えた、『航海』研究の最新刊。必須文献。
松岡利次編訳 『ケルトの聖書物語』 岩波書店 東京 1999.  アイルランド・ダブリン高等研究所ケルト学部客員研究員だった著者による中世アイルランド修道院文学のアンソロジー。古アイルランドゲール語で書かれたさまざまな写本群からの初の邦訳。15世紀の「リズモアの書」に収められた『聖ブレンダン伝』にもとづく説教もアイルランドゲール語から本邦初訳。
松村剛 「冥界往来――『聖ブランダンの航海』」東京大学外国語学科研究紀要 39(2), 1991.  ブノア編 アングロ・ノルマン語版『航海』初の邦訳。詳細な訳注つき。
藤代幸一編訳 『聖ブランダン航海譚』 法政大学出版局 東京 1999.  『司祭アーミス』などの中世ドイツ民衆本の翻訳で著名なドイツ文学者による、ドイツ民衆本版『聖ブランダンの航海』初の邦訳(『航海譚』pp. 6-64.)。 後半は訳者による詳細な解説。

その他参考文献 miscellanea :

Donncha Ó'Corráin, ‘Studies in West Munster History’, Jounal of the Kerry Archaelogical and Historical Society, 1, 1968-70.

Gerard E. Sollbach ed., St Brandans wundersame Seefahrt : Nach der Heidellberger Handschrift Cod. Pal. Germ. 60, Insel Verlag, Frankfurt a,M, 1987.

James Hornell, ‘The Curraghs of Ireland’, Mariner's Mirror, 23, 1937. 有史時代の西ヨーロッパ諸国における獣皮船およびアイルランド特有の革舟カラフにまつわる歴史資料から、動物の革を張った舟の構造について考察した論文。冒険作家ティム・セヴェリンは復元船「ブレンダン号」建造の参考にしました(New! こちらのサイトで論文の一部が転載されています[PDFファイル])。

☆Paul Johnstone, The Sea-craft of Prehistory ; prepared for publication by Sea'n McGrail, Harvard University Press, Cambridge, Massachusetts, 1980. 著者ジョンストンの絶筆原稿を友人マグレイルが著者の意向にできるだけ沿うかたちで校訂出版した古代船舶大全。筏・獣皮船をはじめ、著者が世界中を取材して収集した古代船にかんする研究成果の集大成とも言える労作。アイルランドのカラフについては第10章('The British Isles : skin boats', pp.121-139.)に『聖ブレンダン伝』中に挿入された『航海』の記述およびアダムナン『聖コルンバ伝』の記述を引き、当時の革舟の構造・建造法ならびに航海上の特性について、いずれも実体験にもとづく記述であることを示唆。

☆Paul Johnstone, ‘The Bantry Boat’, Antiquity, pp.277-84, V.38, N.152, York, 1964(with plates XLV-XLIX).  アイルランド・コーク州に現存する5世紀の石柱に浮き彫りされた革舟について、きわめて貴重な資料であると論じ、さらなる研究をうながす。

☆Paul Johnstone, ‘A Medieval Skin Boat’, Antiquity, pp.32-7, V.36, N.141, York, 1962(with plates II-IX)  中世初期西ヨーロッパにおける革舟による交易ルートの検証を通じて、アイルランド-地中海世界との交流がアイルランド特有の修道院制度を生んだきっかけになった可能性を探る論考。

☆Giraldi Kambrensis, Topographia Hibernica 邦訳『アイルランド地誌』有光秀行訳 青土社 1996. ウェールズの司祭ギラルドゥス(ジェラルド)が、アイルランド卿としてはじめてアイルランドに上陸したジョン王子に随行したとき(1183,1185)に見聞きした当地の風物にかんする貴重な記録(1188年完成)。聖ブレンダンについてはp.168(2-43, 聖ブレンダヌスの生涯)およびp.109(2-6, 「戸外に置かれた遺体の腐らぬ島」)。ほかにブランドン山(ブランダヌスの丘)の記述(p.27,164など)もあり。また革舟カラフについての「正確な」証言もふくまれている(p.229)。なお英訳本としてはラテン語版『航海』とおなじオメイラ教授訳が刊行されている。

Arno Borst, Lebensformen im Mittelalter, Propylaen, Belrin, 1986. 邦訳 : 『中世の巷にて 環境・共同体・生活形式』 永野藤夫ほか訳 平凡社 東京 1987. ドイツの歴史家による中世ヨーロッパ社会の考察。ラテン語版『航海』については「空間と環境」冒頭[極楽の島], pp. 165-171.。

Thomas Cahill, How the Irish saved civilization, Doubleday, New York, 1995. 邦訳 : 『聖者と学僧の島』 森夏樹訳 青土社 東京 1997. ゲルマン民族大移動の混乱のさなか、大陸の知識人は大量の書物を抱えて「聖人と学僧の島」アイルランドへ避難した。中世ヨーロッパ文明復興における中世アイルランド修道院教会の果たした功績に光を当てた全米ベストセラー。著者はもとダブルデイの宗教書部長。聖ブレンダンについての言及は第6章の269ページ。著者サイトはこちら

☆Lion Publishing edition of The History of Christianity, Lion Publishing, Oxford, 1990. 邦訳 :『キリスト教2000年史』井上政己監訳 いのちのことば社 東京 2000.. キリスト教2000年の歴史を概説した労作。中世アイルランドの修道制と聖ブレンダンについてはpp. 217-19. 。ティム・セヴェリンのカラフ復元船による実験航海の写真あり。

☆J.R.R. Tolkien, ‘Imram’, Time and Tide, 3 December 1955, p.15. 邦訳 : 「航海譚」、『ユリイカ 総特集 指輪物語の世界』2002年4月臨時増刊号所収、pp.16-32. 訳者・辺見葉子氏による論考「西方の楽園への航海者たち」青土社 東京 2002. 本邦初訳のトールキンの詩『航海譚』と訳者による解題(pp. 16-32.)。

☆Jean Delumeau, History of Paradise: The Garden of Eden in Myth and Tradition, University of Illinois Press, 2000. 邦訳 :『地上の楽園――楽園の歴史』西沢 文昭ほか訳 新評論 2000 フランスを代表する歴史学者による「地上楽園探求の歴史」。聖ブレンダンの言及はpp. 151-154., 中世の地図にしばしば登場するHy Bresail(古ゲール語で至福の島の意)と『航海』について。なお「司教クロンファート修道院長聖ブレンダヌス司教」とあるのは原著者の勇み足…かもしれません。歴史上の聖ブレンダンは「司祭」として叙階され、終生その身分にとどまったからです。

日本アイスランド学会編 『サガ選集』 東海大学出版会、1991. 巻頭に学者アリの「アイスランド人の書」の初の邦訳を収録。アイルランド人船乗り修道士については、第一章(p. 4)に、「当時この地には、ノルウェー人らがパパ(古アイルランド語で「神父」の意)と呼んでいたキリスト教徒が住んでいた。しかし、かれらは異教徒とともに居住するつもりがなかったため、やがてそこを去っていった。アイルランド語の本や、鈴、司教杖等が残されたままになっていたところから、かれらはアイルランド人であったと思われる」との座視できない記述あり。

波多野裕造 『物語アイルランドの歴史』中央公論社 東京 1994. アイルランドのたどった苦難の歴史を、もとアイルランド駐日大使の著者が書き下ろした本。中世アイルランド教会およびヴァイキング来寇については pp.18-46.。

松原秀一 『異教としてのキリスト教』 平凡社 東京 1990.2001年からは「平凡社ライブラリー」の新書版として再刊されています。

盛節子 『アイルランドの宗教と文化――キリスト教受容の歴史』 日本基督教団出版局 東京 1991. 本邦研究者によるケルトキリスト教の意欲的な論文集。聖パトリックにまつわる諸学説についての興味深い考察、中世アイルランドで独自に発達した修道院制度と政治・社会状況なども細かく検討。ラテン語版『航海』についてはpp. 300-06. 。

中央大学人文科学研究所編 『ケルト――伝統と民俗の想像力』 中央大学人文科学研究所 東京 1990. 中央大学人文科学研究所の「ケルト文化研究会」チームの学者による本格的アイルランドケルトの習俗・伝説・伝承の論考集。ドルイドから初期キリスト教修道院文化まで。『ブランの航海』などのイムラヴァについての論考、聖パトリック伝についての考察も収録。

田中 仁彦 『ケルト神話と中世騎士物語―「他界」への旅と冒険』 中公新書、東京、1995. ブノア編アングロ・ノルマン語版『航海』要約を収録(pp. 124-153.)。『メルドゥーンの航海』など代表的なイムラヴァ・エフトリともからめて、これらケルトの神話や伝説がのちに「ブルターニュもの」と呼ばれる一連の中世騎士物語群を生み出す下地になったと説く。

伊藤了子 1).「『聖ブランダンの航海』写本Aにおける間接疑問文の用法」、2).「『ブランダンの航海』における接続法の用法」、3). 「聖ブランダンの航海」における中途半端な天使
1). は人文論究 Humanities review The Journal of the Literary Association of Kwansei Gakuin University 関西学院大学人文学会 / 関西学院大学人文学会 編、1991, Vol. 41(3), pp.102-113. 2). は『年報フランス研究』 関西学院大学フランス学会編、1990, Vol 24, pp. 67-82. 3). は『年報フランス研究』 関西学院大学フランス学会編、1982, Vol.16, pp.1-18. 2). はアングロ・ノルマン語版『航海』写本A(Cotton Vespasian B. X(I), ff.1-11&2, ロンドン大英図書館蔵)および写本E(3316, ff. 96-100v., パリ・アルスナル図書館蔵)を底本としている。3). は未読。1). 2).ともに接続法の使われ方を軸に、アングロ・ノルマン語で書かれた写本Aと大陸フランス語で書き換えられた写本Eとを比較、過去に公刊された校訂版も検証して妥当な解釈を考察する。

☆Malcolm Day, A Treasury of Saints 100 Saints : Their Lives and Times, Quantum Publishing Ltd, London, 2001. 邦訳 神保のぞみ訳 『図説 キリスト教聖人文化事典』 原書房刊 2006. p.71に「船乗りブレンダヌス」として記事あり。アイルランド人聖人ではほかに聖パトリック(p.33)、聖コルンバ(p.34)、聖コルンバヌス(p.75)。

Donald Attwater, Catherine Rachel John, Dictionary of Saints, Penguin(Non-Classics) ; 3rd edition, London, 1996. 邦訳『聖人事典』 山岡健訳 三交社刊、1998.  p.337 に聖ブレンダン(表記はラテン語名ブレンダヌス)の項目あり。聖コルンバ、聖コルンバヌス、聖ブリジッド、聖パトリックも収録。

Paul Johnson, A History of Christianity, Weidenfeld & Nicolson, 1976. 邦訳『キリスト教の二〇〇〇年 上巻』 別宮貞徳監訳、共同通信社刊、1999. 「アイルランドの修道院」 pp. 222-27. に聖ブレンダンの記述あり。

Legend of the Isles: Saint Patrick & Brendan, Acorn Media, 1998. 聖ブレンダンと聖パトリックにまつわる伝説に取材したドキュメンタリービデオ。未入手。

Tim Severin, Epic Voyages of History : The Brendan VoyageFilms for the humanities, FFH 5319, 54 min., 1994. ティム・セヴェリンによる復元カラフを使った実験航海The Brendan Voyageを記録したドキュメンタリービデオ。

☆Mike McGrew, illustrated by Marnie Saenz Litz, Saint Brendan and the voyage before Columbus, Paulist Press, New York⁄Mahwah, N.J., 2005.  『聖ブレンダン伝』、ラテン語版『航海』、ティム・セヴェリンの復元船による実験航海にもとづき、航海者聖ブレンダンの「地上楽園」探求の旅を子ども向けにやさしく語りなおした絵本作品。

☆松村賢一 「ケルト的なるもの(3)――表紙について『聖ブレンダンの航海』の木版挿絵」 『英語青年』2002年6月号、Vol.148(3), 東京

☆志子田光雄・富壽子 『イギリスの修道院――廃墟の美への招待』 研究社 東京 2002. ブリテン諸島におけるケルト教会修道院の代表格アイオナ(pp. 65-75, p.74にブレンダン号のセイルに描かれたケルト十字のモデルになったセントマーティン十字の写真あり)、聖エイダンのリンディスファーン(pp. 85-92)、664年に復活祭問題についてケルト教会側がローマ側に譲歩した宗教会議の舞台ウィットビー(pp.93-99)などを取材している。ローマ教会とケルト教会についての記述・西方世界における修道院の歴史についてもわかりやすく概略している。著者の公式サイトにも多数の関連図版あり。

☆今野國雄 『修道院――祈り・禁欲・労働の源流』 岩波書店 東京 1981. 「III. アイルランド修道士の栄光(pp.47-70)」中、「クロンファートの修道院長聖ブレンダンの有名な航海物語」はアイルランド人修道士に特有な「異教遍歴」の文脈の中で理解すべきとする(p.60)。

☆John Cherry, et al., Mythical beasts, British Museum Press, 1995, London. 邦訳 : 『幻想の国に棲む動物たち』 別宮貞徳訳 東洋書林 1997. 太古より東西の神話世界に登場してきた代表的な空想動物5例を取り上げ、その起源から現代に至るまでの変遷を歴史・文学・文化人類学・考古学と横断的に考察したおもしろい解説書。巻末に「空想動物解説集」と詳細な参考文献(書誌)欄つき。「グリフィン」の項目中、船乗りなど中世ヨーロッパの旅人見聞物語におけるグリフィンの例として、p.120にラテン語版『航海』19章に登場するgriffaについて紹介あり。

☆Henri Irénée Marrou, Nouvelle Histoire de l'Église, I, Éditions du Seuil, Paris, 1963. 邦訳:上智大学中世試走研究所編訳/監修 『キリスト教史 2 教父時代』 平凡社 1996. キリスト教史料基本文献のひとつ。「北ヨーロッパの改宗に向かって」と題された章に、聖エンダ、クロナードの聖フィニアン、キルデアの聖ブリジッドとならんで、「クロンファート修道院の聖ブレンダン」と言及されている(p.454)。

☆Juan Maria Laboa edit., The Historical Atlas of Eastern and Western Christian Monasticism, 2003. 邦訳:『世界修道院文化図鑑』朝倉文市 他訳 東洋書林 2007 世界各地の修道院とその歴史的変遷を美しいカラー図版で紹介するすばらしい大型本。アイルランドに花開いた特有の修道制および聖ブレンダンについてはpp.72-75.。「ジャスコニウス」に乗った聖ブレンダンの舟の写本挿絵も掲載。

☆八住敏雄編 『世界神話伝説大系41, アイルランドの神話伝説[II]』 名著普及会 1929, 改訂版初版1981. 『世界神話伝説大系』シリーズのアイルランド神話を編纂した二巻本のうちの二巻目。ラテン語版『航海』成立と密接にかかわっている『メルドゥーンの航海』を収録(pp.127-170)。

☆松岡利次 『アイルランドの文学精神―7世紀から20世紀まで』 岩波書店 東京 2007. 「7世紀から20世紀まで」という副題にあるように、アイルランド初期キリスト教修道院文学黄金時代の写本から近現代の主要作品まで膨大な文学遺産の海を俯瞰、一貫して流れるアイルランド文学の精神を平明に語る。ヒベルノ・ラテン語で書かれた『聖ブレンダンの航海』についてはp.7およびp.161(「航海物語」の項目)、『聖ブレンダン伝』についてはp.136-8。巻末の「文学年表」と「文献解題+人名解説」も必見。 参考リンク→拙ブログ関連記事

☆Elizabeth Hallam, Saints: Who They Are and How They Help You, 1994. 邦訳:『聖者の事典』鏡リュウジ、宇佐和通訳 柏書房 1996. p.251-2に「聖ブレンダン(訳書では「ブレンダーヌス」とラテン語読み表記)」の項目あり。

☆Bernhart Maier, Lexikon der keltischen Religion und Kultur 1996. 邦訳:『ケルト事典』平島 直一郎、鶴岡 真弓訳 2001.  p.200、「聖ブレンダン(Brendan, Brendanus, Brénaind)」の項目に『聖ブレンダンの航海』の記述あり。

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